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「愛を読む人」 [映画・DVD]


愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD


先週末に借りてきた映画、「愛を読む人」について書きます。

1958年ドイツ。
15歳のマイケル=デヴィッド・クロスは道端で気分の悪くなったところをハンナ=ケイト・ウィンスレットに助けられた。このことにより、二人は関係をもつ。
十以上も年齢の違うふたりが大人の関係になって、その後の展開ではラブシーンの連続とはなるものの…二人は恋人でも愛人でもない関係であった。
ベッドの中や入浴中に、マイケルに本の朗読を頼むハンナ。
そんなある日、突然に彼女はマイケルの前から姿を消してしまいます。それはハンナが仕事ぶりを認められて、車掌の仕事から事務職へと変わるようになったからだった。
そして十数年後。法学専攻の大学生になったマイケルは、ナチス戦犯の裁判で偶然にもハンナと再会をする。

大人になってからは両親との間にも距離をおいてしまい、妻との関係もうまくいかず結婚と離婚を経験したマイケル=レイフ・ファインズ。
その後マイケルは彼女のための本の朗読者になることを決意し、朗読を吹き込んだテープを刑務所に送り続ける。
ふたりの思い出の書・チェーホフの一節から始まる辺りが、とても切ない。
刑務所に送られてきた朗読テープのシーンは、あの表情と独特の声とでレイフ・ファインズの独壇場と言えよう。
ハンナが裁かれたのは、1966年。
裁判の中でマイケルの知り得なかった彼女の過去の秘密、ホロ コーストに関与したその後の彼女の人生が明らかになってゆく。
すべての罪を認めてしまうハンナを傍聴席で見ながら、その訳を思い出の時から理解してひとり涙を流すマイケル。
文盲であることを言えば文書に署名したのは自分ではないと証明できるのに彼女は言わないのだ。結果、無期懲役が確定してしまうのに。
読み書きできないことが知られるのなら、大量殺人の罪を被った方がいいと思ったのだろうか。
それでも彼女の気持ちを理解し、真実に対して口を閉ざすマイケルであった。

そういえば、貧しさのために文盲だったロバート・デニーロにジェーン・フォンダが文字を教えるという「アイリスへの手紙 」という、ハリウッドの大スター競演に関わらず忘れられない佳作もありました。

これだけプライドの高い、裁判中のやりとりにしても人並み以上の理性を持つ人が、それまで生きてきた中でどうして文字を習わなかったのだろうか。
舞台はドイツであるが全編英語による製作である為、何もかもが英語になってしまっているという点にも大きな違和感が残った。
ドイツ人という設定のハンナが、獄中で覚える最初の文字が「the」なのですから・・・・

「いつか晴れた日に」「タイタニック」ですでにノミネート済みのケイト・ウィンスレット、本作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。
マイケル役の大好きなレイフ・ファインズと同じで、ケイト・ウィンスレットもイギリスの女優です。
先のシガニー・ウィバーやグレン・クローズと同じで、いかにも強気なところがたまらない私の好きな女優さんのひとりなのです。
デビュー作の「乙女の祈り」から始まって、マイケル・ウインターボトム監督の「日蔭のふたり」、「グッバイ・モロッコ」、「ホーリー・スモーク」、「クイルズ」、ジュディ・デンチの若き日を演じた「アイリス」など、かなりの本数を見ていることになります。
大作「タイタニック」でのローズ役でも、画家志望で女性の裸など見飽きてしまっているはずのジャック=レオナルド・ディカプリオが思わずドキッとするくらいの脱ぎっぷりでしたけれど・・・
彼女くらいのキャリアがあってさえ出演作のほとんどでそうなのですから、これも見事な女優魂と言わざるをえません。
私生活では「アメリカン・ビューティー」でアカデミー賞受賞・舞台演出家兼映画監督のサム・メンデスと再婚、共に才気あふれたカッコイイカップルだと思ってしまいます。
「レボリューショナリー・ロード」では夫監督のもと、再度ディカプリオと夫婦役で共演しました。

ここで描かれるハンナは最初から最後まで孤独である。始終何を考えてるのかわからないハンナの孤独を、ウィンスレットは台詞にたよらず全身で見事に演じきったと思う。
「チェンジリング」でのアンジェリーナ・ジョリーの熱演も見事でしたが、この時は運がなかったのかもしれません。

若き日のマイケル=デヴィッド・クロスの演技も良かったです。
実年齢は不明ながら・・・15歳から二十歳過ぎまでを演じていますが、まだ世間を知らない少年の清らかさ、青年期に入った感情を抑えた演技とを、見事に演じていたと思います。
清潔感のある甘いマスクは、昨年亡くなったヒース・レジャーにそっくり。
今後が楽しみな俳優です。でも間違っても大味なハリウッド大作などには出ませんように。彼には賢明な選択を望みたいです。

ただ一度だけの二人の自転車旅行で立ち寄った田舎町の教会。ここで子供たちの歌う聖歌を聴いて涙を流したハンナ。
その場所に、彼女のお墓がありました。
二人の間にあったのは情事のみ、特にそれ以上のものはなかった、ハンナは出所間近に会いにきたマイケルの表情からそれを感じ取ってしまったからなのだろうか。
強い意志の力で、自分の最後の決意を実行するハンナでした。

マイケルが感情のすれ違ってしまっている自分の娘とハンナのお墓にまいり、二人の物語を娘に聴かせるところでこの映画は終わりました。静かで余韻の残るラストシーンです。
イギリス人のスティーヴン・ダルドリー監督作品です。

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コメント 3

うしさん

私は映画も本も疎いのですが
娘にハンナとの関係を語るところ。みょうにこころひかれました。
こんなお話また聞かせてくださいね
by うしさん (2010-01-13 19:19) 

hana2009

うしさんへ

ありがとうございます。
今回紹介したのは、重いテーマを持った映画でした。

ハンナとの過去から誰にも心を開けなくなってしまったマイケルでしたが・・・不縁でいた自分の娘の前で、少しだけそんな自分を変えようとするところが私は泣けました。
by hana2009 (2010-01-13 22:25) 

hana2009

デルフィニウムさんへ

nice!を、ありがとうございます。
by hana2009 (2010-01-15 13:12) 

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