暗い心つい読むイヤミス、「贖罪」湊かなえ著 [本]
先の新聞紙上で、「暗い心つい読むイヤミス」との記事がありました。
後味の悪い嫌な気分になるミステリーを「イヤミス」といい、湊かなえ作品「告白」がその先駆けなのだそう。
震災直後とあって昨年は「絆」。また人々が心に癒しを求めるムードが強まったものでしたが・・・
時間が経ち、社会がただひとつの方向だけに向かう事象に対して閉塞感を感じる人に選ばれているのでは?とのコメントが書かれていました。
「イヤミス」の主な読者層は三十代女性だと言う。
ミステリーのジャンルに入れられていても、求められるのはトリックや推理ではなく、心理描写が中心である。
理想主義的な男性と比べて、女性の方が日常に潜む卑しさに敏感。人間のもつ汚さや弱さなど闇も含めて楽しめてしまうのは、逆に強さの証しかもしれない。。。ですって。
これは興味深い現象であると共に、ちょうど湊作品の「贖罪」を手にして読み始めていた私。思わずドッキリ!自分の感覚の若さにではなくて、そんなダークな部分を持ち合わせていた事にだったのだ。そう、ホントは根暗なのよ。
「贖罪」は彼女のデビュー作である「告白」と同じく、章ごとに主人公が変わる独白形式で書かれている作品。
名前を聞いた事ないような平凡な田舎町。取り柄は、日本一空気が綺麗であるというだけ。
そんな穏やかな田舎町で、突然に起きた美少女殺害事件。
その時学校で一緒に遊んでいた4人の少女たちは事件が起きた事も知らずにいたが、プールで死体を発見する。犯人と出会っていたに関わらず、その男の顔をどうしても思い出せない。
その後に被害者の母親から投げつけられた激しい怒りの言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わていくのだった。
―これで約束は、果たせたことになるのでしょうか・・・
ひとつの殺人事件が発端となり15年の時を経て、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味が問われていく。
仲良く遊んでいた友達の一人、それは都会から転校をしてきたそれまではいなかったタイプの少女エミリ。
女優さんみたいに綺麗なお母さんや、豪華なものに囲まれた生活は、他の子供達からは眩しいばかりに輝いていたのでした。
男から選ばれて殺されてしまったのはそのエミリちゃんだったのだから、残された少女たちの心に何かを残さないわけがない。
エミリちゃんのお母さんから、殺人者呼ばわりされ責められる彼女達。
そこに嫉妬や優越感といったドロドロとしたものが、互いの中に渦巻いているのです。
人が心の奥に秘めている感情が終始まとわり続いているかのようなストーリーは続く・・・
互いの心の中にあるイライラや、典型的な駄目人間の思考回路もリアルに描かれているから、変に納得をしたり、気分が沈んでしまったり。そこまで?と不愉快になってしまったり。。。
五番目の告白者は、エミリの母である麻子。
その麻子にしても、エミリちゃんが生まれるまでの経緯、自己中で身勝手な生き方は褒められたものではなく、被害者だからと責めつづけられるものではないと思えるには十分すぎるくらいでした・・・・
読み終えた読後感は決して良いものではありません。
確かに不快な部分は多く疲れてもしまったものの、読むのを止められませんでした。つまり面白かったのです。
それぞれの章の中では納得のいく台詞があったりして、人間の醜さをこれでもかと描く筆力。最後に全てがつながる事件の全貌は、作者が優れたストーリーテラーであることに違いないと思わされるものでした。
一章の「フランス人形」でのきっかけとなる紗英の夫の性癖、人形への異常とも言える愛情シーンから以前見た映画「人でなしの恋」の阿部ちゃんの役柄を思い出しながら読んでしまいました。
こちらは江戸川乱歩原作の短編を映画化したもの http://hana2009-5.blog.so-net.ne.jp/2010-08-26
映画「告白」もしばらく前に見てみました。
普通は原作と比べてガッカリしてしまう事が多いのに、映画は映画でポップなシーンが散りばめられていた、キャストの演技が自然なものだったりして、面白く見ることが出来ました。
原作「告白」の感想は、http://hana2009-5.blog.so-net.ne.jp/2011-06-10
後味の悪い嫌な気分になるミステリーを「イヤミス」といい、湊かなえ作品「告白」がその先駆けなのだそう。
震災直後とあって昨年は「絆」。また人々が心に癒しを求めるムードが強まったものでしたが・・・
時間が経ち、社会がただひとつの方向だけに向かう事象に対して閉塞感を感じる人に選ばれているのでは?とのコメントが書かれていました。
「イヤミス」の主な読者層は三十代女性だと言う。
ミステリーのジャンルに入れられていても、求められるのはトリックや推理ではなく、心理描写が中心である。
理想主義的な男性と比べて、女性の方が日常に潜む卑しさに敏感。人間のもつ汚さや弱さなど闇も含めて楽しめてしまうのは、逆に強さの証しかもしれない。。。ですって。
これは興味深い現象であると共に、ちょうど湊作品の「贖罪」を手にして読み始めていた私。思わずドッキリ!自分の感覚の若さにではなくて、そんなダークな部分を持ち合わせていた事にだったのだ。そう、ホントは根暗なのよ。
「贖罪」は彼女のデビュー作である「告白」と同じく、章ごとに主人公が変わる独白形式で書かれている作品。
名前を聞いた事ないような平凡な田舎町。取り柄は、日本一空気が綺麗であるというだけ。
そんな穏やかな田舎町で、突然に起きた美少女殺害事件。
その時学校で一緒に遊んでいた4人の少女たちは事件が起きた事も知らずにいたが、プールで死体を発見する。犯人と出会っていたに関わらず、その男の顔をどうしても思い出せない。
その後に被害者の母親から投げつけられた激しい怒りの言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わていくのだった。
―これで約束は、果たせたことになるのでしょうか・・・
ひとつの殺人事件が発端となり15年の時を経て、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味が問われていく。
仲良く遊んでいた友達の一人、それは都会から転校をしてきたそれまではいなかったタイプの少女エミリ。
女優さんみたいに綺麗なお母さんや、豪華なものに囲まれた生活は、他の子供達からは眩しいばかりに輝いていたのでした。
男から選ばれて殺されてしまったのはそのエミリちゃんだったのだから、残された少女たちの心に何かを残さないわけがない。
エミリちゃんのお母さんから、殺人者呼ばわりされ責められる彼女達。
そこに嫉妬や優越感といったドロドロとしたものが、互いの中に渦巻いているのです。
人が心の奥に秘めている感情が終始まとわり続いているかのようなストーリーは続く・・・
互いの心の中にあるイライラや、典型的な駄目人間の思考回路もリアルに描かれているから、変に納得をしたり、気分が沈んでしまったり。そこまで?と不愉快になってしまったり。。。
五番目の告白者は、エミリの母である麻子。
その麻子にしても、エミリちゃんが生まれるまでの経緯、自己中で身勝手な生き方は褒められたものではなく、被害者だからと責めつづけられるものではないと思えるには十分すぎるくらいでした・・・・
読み終えた読後感は決して良いものではありません。
確かに不快な部分は多く疲れてもしまったものの、読むのを止められませんでした。つまり面白かったのです。
それぞれの章の中では納得のいく台詞があったりして、人間の醜さをこれでもかと描く筆力。最後に全てがつながる事件の全貌は、作者が優れたストーリーテラーであることに違いないと思わされるものでした。
一章の「フランス人形」でのきっかけとなる紗英の夫の性癖、人形への異常とも言える愛情シーンから以前見た映画「人でなしの恋」の阿部ちゃんの役柄を思い出しながら読んでしまいました。
こちらは江戸川乱歩原作の短編を映画化したもの http://hana2009-5.blog.so-net.ne.jp/2010-08-26
映画「告白」もしばらく前に見てみました。
普通は原作と比べてガッカリしてしまう事が多いのに、映画は映画でポップなシーンが散りばめられていた、キャストの演技が自然なものだったりして、面白く見ることが出来ました。
原作「告白」の感想は、http://hana2009-5.blog.so-net.ne.jp/2011-06-10
イヤミスは初めて聞きました。なかなか興味深い本のように思います。
ターゲット年代ではありませんがw
by サンダーソニア (2012-04-09 08:06)
彼女の作品、前編は凄く素晴らしいですが
後半尻窄みになる気がしますヾ(´▽`;)ゝ
by nano (2012-04-09 08:06)
イヤミス、そんな言葉が有るんですね
告白は映画で見ましたが
とても考えさせられる内容でした
by くまら (2012-04-09 08:32)
>ホントは根暗
私は躁と鬱の差が激しいのですが、元来の気質はネクラっていうか
マイナス思考まっしぐらなんですぅ(ー。ー)
『頑張れ』という言葉にいつも戸惑いを感じちゃうのです・・・
先日思い掛けない早さで「題名のない子守唄」借りて来て貰えました!
先週は色々用事も多かったのですが、慌てて(主人はせっかちなので)
観賞をする事になりました。
hana2012 さんの記事であらすじを知っておいて良かったです!
本当はもう一度ゆっくり観てみたいんですが、多分もう返却してしまったかも?!
マタマタ本文と余り関係ないコメントになりがちでお許し下さい(*- -)(*_ _)ペコリ
by 薔薇少女 (2012-04-09 11:59)
人間はどちらの部分も持ち合わせていて
時と場合と相手によって割合が変化するのだと
以前から思っています・・・・。
by rtfk (2012-04-09 12:52)
今の私には、この本は少し刺激が強すぎるかもしれません。。。
ちょっとした悩みを抱えてしまっているので、明るい内容の本を読みたいような気がします。
(Hanaさん、ごめんなさい)
「告白」の映画は、面白く観ることができたようで何よりでしたね(*^^*)
by hirochiki (2012-04-09 12:55)
イヤミス、嫌味なMissかと思ってしまいました(^◇^;)
子の本、図書館で借りて読んだハズなのに、トリ頭なもので
ちっとも思い出せませんーーーっ(>_<) トホホ(;_:)
by まつき (2012-04-09 13:30)
サンダーソニアさんへ
イヤミス=これって随分と、ストレートなネーミングですね。
ターゲット世代ではないのは、私も全くも同じ。
大人の言葉や行動に、思っている以上に敏感な子供達。
それでも子育て時代に読んでおけばと思ったのは、私だけでしょうか。
nanoさんへ
「告白」の構成のスタイル&内容が優れていただけに、読者側がより以上を求めてしまうのです。
後半が普通になってしまうのって、他の文学作品、映画についても大いに言えると思う事は多いですね。
くまらさんへ
イヤミス=イヤな気持ちのなりがちなミステリー作品のよう・・・
告白は私の場合原作を先に読んでしまっておりましたので、内容的には新味はなかったです。
薔薇少女さんへ
人間なんて、暗い面は必ずあるはず。それがない人などいないものと思ってはありますが。。。
ネガティブな思考は、私も相当あります。
「題名のない子守唄」、あらすじを書いてしまってごめんなさい。
先の「マレーナ」にしろ、同作品にしろ、一人でゆっくりと見たいシーンが多くあったように感じました。
rtfkさんへ
仰る通りです。
人も、物事も、見方や状況により変化もありますし・・・またそれが長所としても短所としても受けられるもの。
人を描くのが、文学作品のテーマとなるのは当然の事なのでしょうね。
hirochikiさんへ
興味のない内容にお付き合いをさせてしまってごめんなさい。
毎日、素敵なお料理をされているhirochikiさんに悩みがおありになるなんて…想像できませんけれど。。。
まつきさんへ
嫌味なMissって! ププッ!
いくら根暗な私だって、そこまで意地悪Mrs.ではありませんわ。
湊作品て、最初の衝撃が魅力って事かしら!?
by hana2012 (2012-04-09 13:55)
イヤミスですか~初めて聞きました
告白も贖罪も
名前は聞いた事がある・・程度で(失礼・・汗
ただ・・・内容は、苦手系でした
ごめんなさい。
多分、自分の精神状態がアレなもので
そのせいだと思います(;^_^A アセアセ・・・
by なぎさ☆ (2012-04-09 13:59)
イヤミス
初めて聞いた言葉だ(=^・^=) ニャー
by えーちゃんaaa (2012-04-09 14:37)
『告白』は前に読みましたが、『贖罪』はまだですね……。
女性作家は、きれい事の裏側にあるドロドロとした感情(特に女性の)を
描写するのがうまいですよね~。それこそ「嫌~な気分になる」くらいに
微に入り細にわたって……。女性読者が多いのも、わかる気がする^^;。
by NONNONオヤジ (2012-04-09 16:35)
なぎさ☆さんへ
なぎささんにしても私から見たら、悩みも苦労も一切感じられませんのに…どうしてでしょう。
本はお嫌いですか?
本作に限らずに自分に無縁な様々な世界を垣間見るって嫌らしいですけど、興味が尽きる事がありません。
えーちゃんaaaさんへ
私も同じです。初めてでしたのだニャァ~
NONNONオヤジさんへ
湊作品登場前までは、桐野夏生さんがそのジャンルでは女王的な作家であったかと思います。
女性心理を赤裸々に描く手法は、どちらも甲乙つけがいものです。
by hana2012 (2012-04-09 22:19)
nice!を下さった皆様へ
何時もありがとうございます。
by hana2012 (2012-04-10 15:53)