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福岡・山口紀行・・⑩「金子みすゞ」記念館 [2017・10月九州・福岡~山口]

「明るい方へ」

明るい方へ 明るい方へ
一つの葉でも 陽の洩るとこへ
やぶかげの草は。

明るい方へ 明るい方へ
はねはこげよと 灯のあるとこへ
夜とぶ虫は。

明るい方へ 明るい方へ
一分もひろく 日のさすとこへ
都会に住む子等は。

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山口県長門市仙崎(当時は、大津郡仙崎村)…と言えば、童謡詩人「金子みすゞ」の故郷として知られています。
みすゞは故郷であるこの地を題材に、短い期間に多くの作品を残しました。

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20歳で詩作を始めた彼女は,雑誌「童話」などへ投稿。発表された作品は西条八十に 認められ、童謡や詩を多数発表するものの、結婚後夫に詩作を禁止され断筆。
創作に対し夫の理解が得られず、3冊の作品集を清書し絶筆。離婚後の娘の養育を巡ったトラブルから選んだ自死という道。26歳の若さでこの世を去りました。

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昔風の造りをした書店「金子文英堂」が、記念館の入り口になっています。

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かつての面影を残した、重厚な雰囲気が漂う内部。生家の営んでいた書店と、すまいを再現したものだそうです。みすゞの作品、愛用品などが展示されていました。
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こうしたさり気ないところに遊び心が感じられるのも・・・昔のお家です。
彼女の詩と生涯へ思いを馳せつつ・・・奥に建つ記念館へ。
遺稿集に、遺した写真に写る・・・着ていた着物の端切れ、遺品の展示。みすゞの生涯と生きた時代を偲びました。

彼女の書いた詩、金子みすゞの良し悪し・・・実はよくわからない私。
それ程知っている訳でもありませんし、詩のもつ独特な作風は、小説やエッセイと違った特別なものですから・・・。
それでも誰でも理解しやすい軽やかで、可愛らしい言葉選びは、エスプリの効いたリズム感がある。どれも彼女の育ちの良さからきたものでしょう。

だから今は特に好きって程ではないけど、好きになる可能性があるならせっかくの長門。彼女の生まれた家に立ち寄ってみたいなと思ったのでした。
金子みすゞの詩集は家にも頂いた一冊があったはずなのに。今回改めて探してみたものの、見あたりません。

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望まぬ結婚で、みすゞの運命は暗転する。
夫が遊郭遊びでうつってきた淋病に、出産直後のみすゞも感染。我が子を思う彼女は風呂の浴槽へも決して入らなかったと言う。
展示から伝わってくるのは、我が子を思う母親としての愛情。
夫の仕打ちに抗議の意味も込めた自殺と言う道。その短すぎる生涯は、男に従わざるをえなかった当時の女性の人生が垣間見えます。
大正・昭和初期の時代に生きた彼女達の位置がいかに低くて、頼りないものであったか。
親の決めた結婚相手、自らの運命に抗うべく・・・選んだ死。しかしだからこそ心の奥底に息づく熱い息吹、秘めた詩作へのエネルギーの強さ!・・・を表現したかのような。。


「大漁」

朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮の 大漁だ。

浜は祭りの ようだけど、

海のなかでは 何万の、
鰮のとむらい するだろう。

http://www.city.nagato.yamaguchi.jp/site/misuzu/index.html

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ここで山口県の日本海とはお別れながら・・・。
最初目にした角島の澄みきった青い海、あの海と続いていると思えない、沈んだ深い海の色です。

それでも、どっちも同じ海だ。
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しかしなぜこんなにも海に惹かれるんだろう。泳げないのに。←そう、私は泳げないけれど・・・。

頬に感じた潮風と、この海の色、きっと忘れない・・・。
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