東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2枚組) [DVD]

  • 出版社/メーカー: VAP independent(VAP)(D)
  • メディア: DVD


昨日の映画「ぐるりのこと」で主演したのは、リリー・フランキー。
そんなリリー・フランキーの初めての長篇であり、大ベストセラー小説。
「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」は亡き母と自分の半生を思いのたけを込めて書いた私小説。それを映画化したものが本作です。

1960年代。
3歳のボクは、オトン=小林薫に愛想を尽かしたオカン=内田也哉子と共に筑豊のオカンの実家で生活を始めることになる。
その後も生活力のない遊び人のオトンに代わり、女手ひとつでボクを育ててくれたのはオカンだった。
成長したボクは町とオカンの元からを出て行きたくなって、大分の美術高校に入学をする。
それからもボク=オダギリジョーは更に遠い東京の大学に進学をし、都内の美大を数年かけてなんとか卒業するが・・・
仕事もせず、何の目的もない日々を送るのは同じ。
そんな中、オカン=樹木希林が癌に侵されていると連絡が入ります。

幾つかの仕事が入って生活できるようになった事から、オカンを九州から呼び寄せて二人は一緒に暮らすようになった。
そんな主人公の生き方は、正にこの映画のタイトルそのまんま。原作同様のこのベタなストレートさがピッタリはまっています。
最初の彼女・タマミ=伊藤歩、オカンからも結婚をすると思われたミズエ=松たか子等が登場するも・・・
本作での主役は、オカンに他ならない。
描かれるのは、母と子の物語なのであるから。。。

私自身の学生時代を思わせるダラけたムードと、ファッション、社会から外れた学生の延長のような生き方。原作者のリリー・フランキーを意識してか、オダジョーは自然な演技で好演しているものと思えました。
子供の頃のオカンとの懐かしい想い出を思う時。今は年老いた、オカンを見守る優しげな眼差し。
愛し愛された母親を想う気持ちを、ナチュラルに表現しています。
樹木希林は働き者で面倒見の良い、誰からも好かれるオカンの役柄を難なく演じて、三人のオカンの中ではやはり一押しの良さ。

ボクがオカンと二人で入院先へと歩くシーン。オカンの手とつながって歩いていたボク、それが今は頼りなげな足どりのオカンの手を引いて歩くのだ。
現在と過去がオーバーラップをして・・・このシーンはとても切ない。
子供は成長して大人になるのだけれど…大人は年老いていくだけなのだから…
こうした繰り返しで人生って続いてきたのでしょうね。

オカンの闘病から亡くなるまでは、見ていてホントに苦しかった。
オトンの小林薫も、朝ドラ「カーネーション」のお父ちゃん役と同じくらいに良かったです。オトンの存在は、二人の間ではスパイス的なもの。

エンディングとなる主題歌は、福山雅治が歌う「東京にもあったんだ」。
思わぬゲスト達が、思いがけない役どころでカメオ出演しているのはお楽しみ!

それでもすでに原作を読んでしまった後で見たら、2時間にまとめたのは無理があったように思えました。
自分自身が長期間の入院生活を終えて自宅に帰って来たばかりであっただけに、本を読んだ時にはやたらと涙が出てしまったものの・・・
ボクの気持ちをストレートに投げかけた原作と違って、映画の方は淡々としたものを感じました。
それと映画の前半、ボクが子供の頃のエピソード部分はシュールなムードが漂う描き方なのです。

この前年には、大泉洋、田中裕子主演で単発ドラマが製作され・・・もうひとつ速水もこみち、倍賞美津子版としてフジテレビの「月9」とある。
これで全てを見たのだけれど・・・やはり原作が一番良かったように思えました。