星間商事株式会社社史編纂室

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/07/11
  • メディア: 単行本


昨日に続いて・・・今日は、最も最近になって読んだ本の話。なーんて書くと、またドン引きされてしまいそうですけれど・・・
今回の主人公は、中堅商事会社の社史編纂室に席を置く川田幸代。
実家の親からは暗に結婚はまだかとせっつかれている、そのうっとおしさから親とも距離を置く崖っぷちの29歳、同棲する彼は居るものの結婚の予定はなし。。。
そして彼女は、「同人誌作りこそが我が人生」なオタク。
飛ばされた社史編纂室は・・・・定時に出社する事のない給料泥棒の名がぴったりな本間課長。
可愛くてグラマラス、しかし仕事は出来そうな・・・不思議な子・ミッコちゃん。
仕事そっちのけで女遊びに忙しい毎日をおくっている矢田先輩。その上、姿をあらわさない謎の部長まで・・・と、スペサルな面々が揃っていたのだった。
この設定からは、以前ヒットしたテレビドラマ「ショムニ」が思い出されました。

幸代がオタクである事がばれてから、「社史編纂室でも、同人誌を作ろう!」と柄でもなく何時にない程に積極的な本間課長。それは彼のただの気まぐれか、それともその真意はどこかにあるのだろうか?
この面々が本業である星間商事の社史作成に当たって調べを進めていくと、過去の関係者だれもがが口を濁す時代があった事に気づく。
高度経済成長期の最中星間商事には秘められた過去があり、それが現在の発展につながったと言う・・・
謎の社用原稿用紙に付けられた、月と星のマークの意味するものは何!?
それは実在することのない架空の国「サリメニ」と、国王に差し出された姉妹である日本女性二人。
現在の専務である柳沢もそこに関わっている事実を、つきとめたのだった。

この長い堅いタイトルに反して、ゆる~~い内容。
しかし次第に活き活きと活躍を始めるそれぞれのキャラ。
ただのダメ親父にしか見えない本間課長が、意外と出来たりするのは・・・・この手の作品のお約束!
仕事も女性関係もいい加減に生きている様に見えた矢田も、最後にはキッチリと決めてくれるのだった。
星間商事の空白の過去、サリメニ共和国で行われた取引が書かれた裏社史は皆の協力の上にようやく完成をする。

皮肉やつっこみどころ満載の面白い会話。
ストーリーもテンポよく軽快で気持ちの良い、楽しく読めた一冊です。
コミケ(コミックマーケット)=同人誌即売会の存在も知って、こういった世界が多くの人に支持されている事実も興味深く思いました。
読んでいる最中から「同人誌」や「コミケ」に、一度でいいから参加してみたくなる内容でした。
ストーリーの途中、途中に絶妙のタイミングで挿入される幸代の書いた小説、本間課長の書く痛快時代劇があります。
課長の時代劇は、荒唐無稽で馬鹿馬鹿しいのだけれど楽しめました。もっと読みたかったなぁ~~
この辺りにも、オタクムードがプンプンしてとても楽しめます。

三浦しをん作品は、直木賞を受賞した「まほろ駅前多田便利軒」を随分前に読んでいました。
過去の日記から探し出しましたので、よろしければこちらへ#59098;http://plaza.rakuten.co.jp/simarisuu/diary/200608310001/#comment
この時には、この程度でも「直木賞」受賞となるのね。・・・くらいにしか思えない内容でした。
どちらも軽いけど、「星間商事・・・・」の方がずっと楽しめるかと思います。
本の装丁とカバーは、読んでいくとそれぞれが本作の中でどうして使われたのかその理由もわかって、その辺りも楽しめる仕掛けとなっています。


まほろ駅前多田便利軒

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本