マレーナ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 日活
  • メディア: DVD



映画の舞台となるのは、第二次世界大戦中のイタリア、シチリア島。
大人に憧れる年頃、早く大人になりたくて仕方のないおませな少年レナート=ジュゼッペ・スルファーロは、街一番の美女マレーナ=モニカ・ベルッチに夢中になってしまいます。
レナートの毎日は、ひたすらマレーナのことだけ。ラブレターを書いたり、日々ストーカー紛いの追っかけをしたりと…その思いは狂おしいほど。。。
映画の前半に度々繰り返される、彼の妄想シーンはキャラの可愛らしさもあって、つい笑ってしまいます。
マレーナはここに住む男達にとって女神のような存在。反面その美しさゆえに女性達からは嫉妬の的であった。

結婚したばかりのマレーナの夫はアフリカの戦場へと行き、その後すぐに帰らぬ人となり・・・
教師であった父親までもが、空爆の為に命を落としてしまう。
お金も尽きた彼女は生きていく方法として、自らの身体を男の求めのままに差し出していきます。
戦争下の時代の波にのまれ運命を変えられた彼女、対して周囲の中傷の中でもひたすら見守ることしか出来ずにいるレナート。
作中のカメラは男の視線となって、また時には街の人々の眼差しでマレーナの姿を追いかけます。
寡黙なマレーナとは対照的にとにかくお喋り好きな街の人々。楽しみは人の噂話だけなのかと思ってしまうほどでした。

長く波うつ黒髪、麗しい横顔、男たちが憧れをもって眺めるヒップや長い脚。
スタイルの良さも含めて、モニカ・ベルッチはとにかく美しいです。この映画の最大の魅力だと思えます。
まっすぐ前を向いて歩く、長く濃い睫が印象的で、伏し目がちなところも魅力。
台詞をほとんど喋らない寡黙さが、彼女をよりミステリアスに見せています。

夫だけでなく父親まで亡くしたマレーナだが、女性達からの嫉妬の強さから仕事にも就けず、食べるものにも事欠き・・・とうとう娼婦になってしまうのです。

街に進駐してきたドイツ軍を相手にするまでに身を落としたマレーナでした。


そして戦争は終わった。
ドイツ兵と関係をもったマレーナは、町の女たちからリンチをされてしまう。
そんな彼女を誰も助けなかっただけでなく、周囲はただ見つめるだけ。更にはここから出ていくよう言われて、街から一人そっと立ち去る彼女。
しかし、戦死したはずの旦那さんが帰って来て・・・夫の手で探し出されたマレーナは、街に戻ってきました。
人々の視線をものともせず、衆知の中を堂々と腕を組んで歩く二人。このシーンには人々がした行為に対する意地、強い意志が表れています。
地味なスタイルのマレーナからも、毅然とした決意のこもった美しさが感じられました。

主役のモニカ・ベルッチは、旦那さんがヴァンサン・カッセル(昨年のダーレン・アロノフスキー監督による「ブラック・スワン」ではセクハラ・バレー監督役)だからフランスの人と思っていましたら…元々がイタリア人。

映画のラスト、これまではただ眺めるだけか、常にその姿をのぞき見るだけだったのに・・・「どうかお幸せに、マレーナさん」と声をかけるレナート。
これは美しいシチリア島の風景を背景にした少年レナートの初恋物語でありながら…戦争の時代を生きた大人たちの物語。
当時の日本と同じで、人々が同じ価値観でもって戦争へと突き進んでいった狂喜、時代が描かれましした。
町から追い出されたマレーナが夫と戻ってきた途端に、自分たちのしたことを忘れたかのよう態度を変える市場の人々。

本作はジュゼッペ・トルナトーレ監督、エンニオ・モリコーネの楽曲による2000年公開のイタリア映画。
このイタリアを代表する二大巨匠から思い出されるのは、本作とはチョッと趣の違う名作「ニュー・シネマ・パラダイス」。
次回もまた、同巨匠たちが作り上げた作品の紹介をしたいと思っています。