ホテルをチェックアウトしたあとは、北九州市内を西へ、隣りの小倉まで足を延ばしていました。

1909年(明治42年)小倉市(現・北九州市小倉北区に)で生れた、作家・松本清張の偉大な業績を伝える資料館「松本清張記念館」を訪ねる為です。
内部の撮影はしていませんの、以下文章のみの紹介となりますけど。。


生家が貧しかったため義務教育しか受けられず…最初は給仕、印刷工など数々の職歴を経てのち・・・印刷工として朝日新聞西部支社に入社。
41歳で懸賞小説に応募、入選した「西郷札」が直木賞候補となり、1953(昭和28)年に「或る「小倉日記」伝」で芥川賞受賞。
どちらも随分前に読んだものながら・・・
地元を小倉を舞台に、森鷗外が軍医として小倉に赴任していた3年間の日記、「小倉日記」の行方を探すことに生涯を捧げた田上耕作の生涯を描いたもの。
この主人公は生まれつきの障害で片足が麻痺しており、口が開いたままで言葉もうまく喋れない。しかし知的障害はなくむしろ優れた頭脳をもっている。
彼と母親との二人で歩んだ、孤独で短い生涯の悲哀を描いた短編小説である。

1958年の「点と線」は推理小説界に新風を吹き込んで、清張文学の代表作となりました。
当時としては意表をついた殺人トリック、アリバイ工作など、本作により社会派推理小説に新ジャンルを築いた・・・清張の功績は大きなものと思えます。
本作に登場する地名=香椎、JR(当時は国鉄)香椎駅は事件の発端となるところ。殺害現場とみられるのも博多湾なのであった。
海ノ中道へのドライブ中、「香椎」の地名にひっかかったのは・・・今になって思えばそれでだったのだろうか。

「ゼロの焦点」「砂の器」「波の塔」「霧の旗」「球形の荒野」「けものみち」等・・・以上の作品群からは、いずれも昭和30年代初期のムードが色濃く漂うものの・・登場人物達の感情、心理描写の鋭さ、人のもつ先入観による盲点をついた表現など。
社会に潜む恐ろしさを描いた作品は、時代が変わろうとも色褪せない魅力に満ちたものと感じます。
だからこそ、現在でも映画化、テレビドラマ化され続けているのでしょう。理屈抜きに読者の心を掴んでしまう魅力があるのです。

亡くなるまで執筆し続けた、約700冊とも言われる著書の数々。
作家としての活動時期が遅かったに関わらず、生涯を通じて旺盛な創作活動を展開し、その範囲は古代から現代まで多岐にわたったのである。

館内には清張の仕事部屋が再現されているほか、創作活動や人物像を遺品や映像などで紹介している。
亡くなってからすでに20年以上も経つと言うのに、その作品群は色あせない、現代を生きる我々の中でも生き続けているかに思えるのです。
http://www.kid.ne.jp/seicho/html/

          
地下一階のミュージアムショップで、お土産として文庫本を二冊購入してきました。
迷った末に、読んだ事のない…逃れられない過去に囚われ続けしか生きる術のない「無宿人別帳」。「松本清張傑作選より、浅田次郎セレクション 悪党たちの懺悔録」。
こちらで本を求めると、嬉しい事に・・・このようなオリジナルカバーをかけてもらえるのです。


関門海峡に面した小倉は陸海の交通の要として、古くから砦や城が構えられた土地。この地を抑えるために繰りひろげられた、多くの豪族たちの攻防の地でもありました。
          
小倉城は戦国時代に毛利氏が城を築いたことに始まって、江戸時代は小笠原氏の居城となりました。城下町は、城をランドマークとしながら九州の各地に向かう街道の起点としての発展をし・・・・。
第二次大戦後は米国に接収されましたが、1957年に解除され、1959年市民の熱望によって天守閣が再建されました。
小倉城の天守閣は「唐造り(からづくり)の天守」と呼ばれ、四階と五階の間に屋根のひさしがなく、五階が四階よりも大きくなっているのが特徴だそうです。

http://www.kid.ne.jp/kokurajou/html/index.html


小倉城の天守閣からは、360度ぐるりと小倉の街が見渡せました。
車椅子使用者とか、私の様に足が不自由だと天守閣まで上がって見られるお城は限られてしまうものながら・・・ここ小倉城は一人用の椅子式リフトがあり、利用したら天守閣から眺めるのもOK!
上がる途中に付き添ったスタッフのお姉さんに「どこからですか?」と聞かれて「栃木です」と答えても??
イマイチな反応から、「栃木は東京より、少しだけ北にあるところよ。」
「東京へは遊びに行った事はありますか?」と聞いてみましたら「はい、一度だけ。人も車も凄くてビックリしました。東京に近いって、良いですね」ですって。

それから5階の展望室で目立っていたのは、東南アジアから来たと思しき若者達。
関東では都内や箱根を別として、そう見かける事のないC国人の人の多さに、九州では驚きっぱなしでいたのだけれど。。

     
聞けば、彼らはラオスからやってきた大学生で、市内でホームスティしているのだと言う。
女の子たちの恰好は、ダウンの下にシルク製の民族衣装っぽい装いをしているのです。
展望台からの眺めよりも、設置されている自販機のアイスを買って食べる方に興味シンシンて感じで。。一斉に群がっている様子が可愛い#59126;
アイスが出てこないって・・・呼ばれたスタッフさんは、アイス売り場のお姉さんに変身#59142;

帰り際、面倒だから階段を使ってしまった私。
一段ずつ降りていたら、一人の女の子がそっと控えめに「May I help you?」って#59117;
はーい、大丈夫だけど・・・「Thank you.」です#59125;
北九州は想像以上に、国際都市なのですね。

※購入した二冊は、帰宅後すぐに読み終えてしまいました。
文章の達人、浅田次郎をして・・・松本清張は「怪人だ」と言わしめた著者。
手にしたら最後、最後まで読み続けてしまうストーリー展開。背景となる時代の景色、空気まで読みとれるかのように・・・引き込まれてしまう文章。
登場人物達のもつ性格や行動を元に、造りだす卓越した人物造形。
我々読者の心を掴んで離さないストーリー性は・・・まさに「怪人」の名に恥じないものと改めて思った次第です。