先週は、映画を3本レンタルして観ました。
「マンマ・ミーア」「グラン・トリノ」「Into The Wild」です。
最も期待が大きくて真っ先に観たのは「グラン・トリノ」でしたが、私的にはラストにひっかかるものがあり・・・
そのイーストウッド監督作品「ミスティック・リバー」で主演をしていた、ショーン・ペンによる監督作品が「Into The Wild(イントゥ・ザ・ワイルド)」
この映画も前評判が高い作品の一つと言う事で借りてきて見ました。
アラスカ州の荒野で謎の死を遂げたひとりの若者の姿を追った、ノンフィクション作品「荒野へ」がこの映画の原作になっています。
東海岸の裕福な家庭で育ち人生のエリートコースを約束されていた若者・クリストファー・マッカンドレス=エミール・ハーシュは卒業後、家族と生活全てを捨てて未知の土地へと旅立ってしまう。
我々から見れば恵まれた境遇の青年がどうしてそんな悲惨な最期を遂げることになっってしまったのだろうかと、思ってしまうプロローグでした。

ショーン・ペンを私は最初、あのマドンナの旦那さんとしてしか見ていませんでした。
それにしてもあのふたり、いかにもビッチなムードを漂わせているマドンナ&不良白人それもチープな悪って感じのペン、私にはナイスカップルに見えたのですけどね。
二人とも互いに個性が強すぎたのでしょう。

俳優としての彼は、俳優のティム・ロビンスが監督した「デッドマン・ウォーキング」では殺人事件を起こした為に死刑になる男、この役の彼はとても良かったと思います。
その後の「ミスティック・リバー」では被害者の父親役、その復讐のため間違った殺人を起こしてしまうと言った複雑な心境を演じました。

話は、この作品に戻って・・・
旅立つ前にクリスが見ていたのは偽りの世界、物質的社会批判する彼は優等生であるが、それゆえなのか両親との間に確執があった。
その両親に扮するのはこちらも私の好きな俳優のひとりであるウィリアム・ハート、クリスの生い立ちと思春期に重大な影を落とす役である。
母親役はミスティック・リバーでショーン・ペンとも共演した、彼に間違って殺されてしまう男=ティム・ロビンスの妻役だったマーシャ・ゲイ・ハーデン。
彼女は自分は愛人であって生まれた子供たちは私生児という事実をプライドで隠して、世間的には何不自由ない幸せな妻をよそおって生きてきました。

居場所のない家、面倒な存在でしかない家族、何もかも捨て心のおもむくままに旅に出てしまうクリスでした。
貯金は寄付し、カードを切り捨て、旅の始まりでは車も捨て、持っているお金も焼いて、自分の荷物さえも置き去りにしてしまう・・・ここで、クリスの心が相当病んでいる事実が解ってきます。
行く先々ではいろんな人と出会い、別れて・・・と、この映画は私の好きなロードムービー。

出会った人々との会話の中に、彼の家族への思い、生きるの意味への問いかけが描かれる。
キャンピングカーで気ままな旅を続けるヒッピーファッションのカップル。
自由気ままに生きているように見える彼らでも、互いの奥底には擦れ違いがあり、ジャン=キャサリン・キーナーは自らの子供とも2年間連絡が取れずにいる、その母としての苦しさをクリスに打ち明けるのだ。

最終的な目的地である、アラスカへ。
そこで最後に出会う老人ロン= ハル・ホルブルック も、クリスを愛するひとり。
「どうしてそんなに、何から逃げているんだ」とクリスに問うロン、「それは、お互い様だ」と反論をするクリス。
ロンは別れ際に「自分の養子にならないか、私は君のおじいさんとなろう」とまで言うのだが、その言葉もクリスの心まで届く事はなかった。
人生って、人が生きる意味って、とつい考えながら観てしまう映画です。

それに、アラスカの大地を自分も旅してるかのような迫力満点な映像の連続。
美しい季節の移ろい、大地の持つ陰影、揺らぎ、厳しいアラスカの大自然は圧巻である。
クリスのアラスカでの日々は、鮮烈な輝きに充ちあふれてれいた。
その前では我々の日々の営みの、なんとささやかな事よ。
荒野の持つエネルギー、豊饒な大地とそこに生きる動物たち、大地に宿る強い生命力への恵み。
人も自然の一部である以上、そこには生きるための何かが秘められているものと思う。
ヒース・レジャーの「ブロークバック・マウンテン」は、アメリカ北部が舞台となった映画。あの映画でも北の大地とそこで生きる人の姿が描かれてはいましたけれど・・・

結局、クリスはその力に負けてしまったのだろうか。
このような「死」をテーマにする作品はとかく暗くなりがちですが、クリスの最後は決して暗く寂しいものではなかった。
仰ぎ見た輝きに満ち溢れた空、最後によぎった家族への思い。
彼自身も、その大地の一部となったのだ。それはずっと彼自身が望んでいたことなのだから。。。

お勧めの一本です。機会がありましたら是非見てください!


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  • メディア: DVD