夏の間に読んだ本について、今日は書きたいと思います。
「玻璃の天」を読んでから、かなりお気に入りとなってしまった北村薫作品。
花村家のお嬢様・英子と、通称ベッキーさんこと別宮みつ子が活躍をするベッキーさんシリーズ。
ベッキーさんは当時は珍しかったであろう女性運転手。のみならず頭脳明晰で博識、栄子にとっては良き相談相手なのである。
直木賞受賞作品の「鷺と雪」は、シリーズの三作目です。
二作目「玻璃の天」から読んでしまいましたが、今回は「街の灯」「鷺と雪」へと順番に読みました。
軍部が中心となって戦争の時代へと突入していく昭和初期が、シリーズの時代背景となります。
登場するのは明治期を思わせる華族や財閥、そんな友人を持つ裕福な家の女学生と彼女専用の運転手。
ここではなんと言ってもその時代背景が魅力。今では想像もつかない昭和初期の上流階級の暮らしぶりが興味深くて、満足感高く読めたのでした。
「玻璃の天」を読んで感じた感想については、こちらへ#59098;http://hana2009-5.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02

こちらもお気に入りの作家、桐野夏生のものは「IN」を。
「IN」はタイトルと本の装丁が似ている「OUT」がイメージされて、描かれるストーリーも似通ったものと思い読み始めたものの・・・全く違う内容の作品でした。
ストーリーの中心となるのは作家・緑川未来男が書いた小説「無垢人」と、そこの中の恋人○子。
「無垢人」は、○子と夫との関係に嫉妬し狂う妻と緑川との日々をを赤裸々に描いた私小説。これは島尾敏雄の「死の棘」が連想される内容です。
作家の鈴木タマキはこれまで明らかにされてこなかった○子を特定しようと、取材を進めていく。そこにタマキと、担当編集者との不倫も絡んで・・・

先の「OUT」では、ヒロイン雅子と雅子を追い詰めていく男佐竹との対決シーンが私の中では特に印象に残りました。
ブラジルまでひとり逃避行を続ける雅子の強い生き方に、世間の価値観から外れて生きるカッコよさを感じました。あれは犯罪小説と言うよりも、ハードボイルド小説。
女性が生きていく上で社会に抱く矛盾や挫折、それらに対する洞察力が優れているのがこの作者の大きな特徴だと思う。
「OUT」は海外でも評価されて、エドガー賞に日本人初としてノミネートされました。結果はイギリス人作家が受賞しましたが、これは大変な快挙と言えると思います。
桐野夏生はどれも常に、作品を一気に読ませる圧倒的な筆力があると感じながら読んでしまいます。
ソネさんに私が越してきてから一年と少々。時々送られてくるブログレポートにおいて、不動の一位は彼女の「東京島」を紹介したものなのである。
恐るべし・・・桐野作品。その東京島について感心のある方は、こちらへ#59098;http://hana2009-5.blog.so-net.ne.jp/2009-09-03

次は、重松清の「きみ去りしのち」。
このタイトルから想像できるように・・・家族の「死」を題材とした作品です。
再婚した妻との間に生まれた息子を、1歳の誕生日の直後に亡くした私。そして皮肉にも、これから死を迎えようとする彼の元妻。
私と、別れた妻のもとで成長した娘明日香との旅が綴られていきます。
約1年がかりの旅の末に、本作も終わりを迎えます。それはセキネが明日香との絆を確かめていく物語として捉えましたけれど・・・・テーマの割りに、あまり心に残るものがなかったような・・・
作者のものは「カシオペアの丘で」に次いで読んだものでした。

ラストはあまりにもべただけれど、東野圭吾の「新参者」。
この作者の書いたものって映画化やドラマ化をされるものが数多く思います。
こちらも先日テレビドラマ化されたばかりの、原作本です。
タイトルからイメージされるあざとさと、加賀恭一郎=阿部ちゃんは合わない感じがしてしまって・・・ドラマを見ることは敬遠してしまっておりましたけれど。。。
随分以前に読んだ「赤い指」に続く加賀恭一郎シリーズの最新版。
日本橋小伝馬町に越してきたばかりの一人暮らしの女性が殺された事件、地道にそのなぞを解き、事件を解決まで導く加賀。
日本橋署に着任したばかりのその加賀が口にする「ただの新参者です」の台詞から、このタイトルが取られていることが解りました。
今回、紹介した中では本作が一番面白かったように思いました。

どれも寝付く前の暇つぶしに読んだものばかり。
次々に読んで、次々と忘れていってしまうものだから・・・どれも簡単な紹介のみ。簡単な感想ばかりでした。

街の灯 (本格ミステリ・マスターズ)

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 単行本



鷺と雪

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 単行本



IN

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/05/26
  • メディア: 単行本



きみ去りしのち

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 単行本



新参者

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/18
  • メディア: 単行本