作家・五味康祐の創作による、時代小説「薄桜記(はくおうき)」。
            

先に紹介したミュージカル「RENT」の日本版で主役のマークを演じたのは山本耕史。
現在彼が主演している、夜8時から放送される木曜時代劇「薄桜記」…に、私はスッカリはまってます。これ、ささやかな毎週のお楽しみ。
PCの壁紙も、ベビ子からこちらの典膳様に変えてしまったくらいなのです。

「薄桜記」で真っ先に思い浮かんだのは、丹下典膳=市川雷蔵、中山安兵衛=勝新太郎と言う、1959年公開の大映映画でした。
勿論リアルタイムでは観ていないものの、小さいころから静かでお利口さんだった私はお父ちゃんに連れられて毎週のように映画を観に行っていた。物心つく前から、映画館の常連さんでした。
だからその頃に公開された大映作品の数々。30代の若さで亡くなった市川雷蔵の出演作、若かりし頃の勝新も沢山見ているのです。今ではわずかに覚えているくらいですけど・・・

時代劇に関心のない方でも知っているのが、江戸・元禄時代に発生した事件が元になったと言われる「忠臣蔵」です。
忠臣蔵での赤穂浪士たちの活躍の陰。吉良方のひとりの侍として、しかし人知れず消えさった・・・架空の人物が丹下典膳(たんげてんぜん)です。その波瀾に満ちた生き方が描かれました。

卓越した一刀流の使い手である旗本・丹下典膳=山本耕史は、婚礼後すぐに大阪番を命じられ、新妻・千春=柴本幸を江戸に残してゆく。
典膳の留守中、千春は少しの油断から実家の家来に犯されてしまいます。それがきっかけで妻と妻の実家の名誉を守るために片腕を失い、浪人となってしまう典膳。


その日から、後々赤穂藩の家臣となる安兵衛=高橋和也と互いに助け、助けられて・・・。
武士として熱い思いは持ちながらも、全くキャラの違う、典膳と安兵衛。
明るく闊達な安兵衛、「静」と「動」とも言える二人の共演シーンは重くなりがちなストーリーの中でスパイス的な役割を果たして・・・ほのぼのとした気持ちになります。
安兵衛のもつ豪胆さも良い。

片腕を失った上、旗本から浪人へと身を落とし、雨漏りのする長屋暮らしをするまでになってしまう典膳。
そんな悲運にも関わらず、惨めな姿と境遇でも常に毅然とした態度で生きる潔さ。
これまでとは一変した長屋住まいにおいても、隣人となる住人達に接する時の眼差し、物腰からは温かな人間性が感じられました。

山本耕史演じる丹下典膳の容姿の美しさ、色っぽさ!特に浪人となってからの着流し姿、総髪(長い髪を束ねているだけ)スタイル。
演じる俳優によって、これ程まで作品に気品が出るとは。
凛とした佇まいにはほれぼれとしてしまうばかり。山本典膳はとにかくカッコイイです。
その生き方には、現代人が見失ってしまっている潔さも感じられて・・・。
アップで映るもツルンとした茹で卵のような白いお顔は、とても三十半ばとは思えません。美しいの一言。
しかしその年齢だからこそ出せた、落ち着き、力強さはあるでしょうね。
台詞や所作のひとつひとつも、品があって美しい。
彼の姿を見ているだけでもう満足!このドラマはそれに尽きると言っても、言い過ぎではないと思います。
いえ、明るい安兵衛さんも可愛いのですけれど・・・。

            
脚本ジェームス三木による「薄桜記」は、そこに描かれた武士・丹下典膳の精神性、醸し出される悲壮感、どちらも素晴らしいです。迫力ある殺陣の見事さも必見のもの。
脚本・配役・背景・音楽・・・全てが揃い、上質なテレビドラマが出来上がりました。

互いに思っているのにそれぞれの立場やしがらみから、再び一緒になれない典膳と千春。
その辺りが、台詞のひとつひとつから感じられて切ない。
悲しくて切なくて、それでもやはり美しくて・・・・・二人の恋の行方。勿論、中山安兵衛の行く末も。次回が楽しみでなりません。
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/hakuouki/

山本耕史主演の「陽炎の辻」も、最初のシーンだけは見たのでしたけど。。。この主人公・坂崎磐音も剣豪にして、誰からも愛される長屋の住人と、設定は同じような・・・。
何でも良いから、もっと見たいな。