先週の・・・〇ジテレビの番宣を見て、二人して何となく観たいなと思ってしまった…映画「バンクーバーの朝日」。
戦前のカナダ、バンクーバーに実在した、日系人の野球チーム「バンクーバー朝日」を描いた作品です。
ウジと〇通が関係しているのは気にいらないけれど・・・本作の監督が昨年、評判高かった「舟を編む」を撮った石井裕也監督であった事。
また映画の、ロケ地は・・・
カナダ・バンクーバーのほかに、本作のメインステージとなる・・・当時の日本人街、野球場を足利市に再現。広大なロケセットは足利市富田地区に組まれて撮影されたのだと言う。
それに主演の妻夫木君、亀梨君も好きですしね。。
早速観てきましたので…今回は映画の紹介、感想を書きたいと思います。

石井裕也監督と言えば、女優の満島ひかりの旦那さん。・・・と言う事は当然、若い。31歳ですって、家の息子よりも年下なのです。
そして出身は埼玉、詳しくは知りませんが、同じ埼玉生まれとしてはなんとなく近しく感じられるのです。

メジャーデビュー作品の「川の底からこんにちは」、←この映画は観ています。
これがきっかけとなって、主演の満島ひかりと電撃結婚をしてしまったのでした。
病気で倒れた父親の代わりに実家のしじみ工場を継ぐことになったサエナイOL…。「私はどうせ中の下ですから」が口癖の・・・ネガティブヒロイン。
しじみ工場で働くおばちゃんたちのパワフルさも含めて、全編を通して流れるムードがなんとも可笑しい映画でした。

平凡に生きる私達と等身大・・・それは本作の主役である、チームのキャプテン・レジー笠原=妻夫木聡の人物像にも投影されているような気がします。
能力ない訳じゃないのに、自分の思いをうまく言葉にして出せない。
理不尽な言動を続ける白人達を前にして、謝ってばかり…と、およそ映画の主役とは思えない寡黙さ。ウジウジとした態度も、およそ主人公然としていない・・・。
ピッチャー・ロイ永西=亀梨和也も同じようにネガティブで、言葉の少なさには観ていてイラついてしまうほど。

遥々海を渡って来た一世である父=佐藤浩一の、不器用な生き方にしても然り。
惰性で日々をおくるだけ、肉体労働に明け暮れる中で得た少しの賃金さえ、日本で暮らす親類へ成功していると思わせたいが為、仕送りしてしまうのだ。
実際は現地の言葉を覚えないがゆえに、仕事も限られ貧しい暮らしを送るしかない。
会話が成立しないから頭が悪いと見下されているのに。。。

カナダの西海岸、バンクーバーの日本人街が映画の舞台。
豊かな生活を夢見て移住していったその地で・・・日系の一世、二世たちは地味に、真面目に、一生懸命働いて生きていた。
そんな仕事の合間にする野球の練習と、試合。
体格の小ささ、白人たちとの体力差から、万年最下位にあまんじるをえない・・・バンクーバー朝日チーム。
それでもバントに盗塁、堅い守りなど、緻密な機動力を駆使し。。「頭脳野球」と呼ぶ戦術を編み出してゆくのだ。
日系人たちに勇気、希望をもたらすだけでなく、フェアプレー精神で戦い抜く姿勢は対する白人たちからも賞賛と信頼を得ていくのだった。
しかし、日系移民への排斥運動の高まりにより、その職さえ奪われていく。。

第二次世界大戦の勃発により、日系カナダ人も日系アメリカ人同様に財産を没収され、収容所内へ抑留される。
登場人物達が人種差別、それに伴う報われない労働、貧しさなど・・・個人の力ではどうにもならない状況の中で奮闘し、成長していくという・・・シンプルなストーリー。
実在したチームがモデルとなっているのであるから、そのストーリーには大きな逆転劇、彼らの行く末には希望もない。
抗えない運命、逆境に立ち向かう人々の姿。
そして、彼らの「一瞬の輝き」が描かれた作品であろう。
思っていたほど監督の感性が表だって出ている訳ではない、至って真面と言うか、我々観客に投げられてくるものは…「ストレート」な「直球」。予想していたほどのアザトサはなく、正当に勝負してきた作品であったものに思える。

個人的には、妻夫木君の母親役として石田えりさんが出演していたのが嬉しかった。
作家の故・立松和平が書いた、地元・栃木を題材にした小説「遠雷」。
それを原作とした、ATG作品「遠雷」でのヒロイン役がなんと言っても印象に残ってます。
同時代を生きた世代として、地方の農村にも急激に押し寄せてきた都市化。密着した家庭内で起こる些細な軋轢、面倒な関係。
お見合いしたその日に「モーテルへ行くべ」と誘う主人公の台詞には驚いたものの…それは今では失われつつある野性味?
誘いを受ける側の彼女のもつ、まだデビューしたてであった新鮮なルックスは、土の匂いがしてくるように肉感的であり。これも現在はすでに失われてしまったもの。
地方に住む色っぽくて異性にモテる。そんな彼女のもつムードが役柄にハマっていて、「こういうタイプっているよな」とリアリティを感じさせて、身近に感じられた。
今の人達にとっては「ATG作品」、「モーテル」と言った言葉さえ死語となっている訳ながら。。

脇を固めた・・・一世を演じたオジさん達は、意外に豪華な配役。演じる俳優さん達が大らかに楽しげに演じていて、それぞれの個性が楽しめました。


戦前のカナダでの活躍が認められたチーム「バンクーバー朝日」は、2003年になってカナダ野球殿堂入りを果たしました。
http://www.vancouver-asahi.jp/