月下の恋人

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/10/21
  • メディア: 単行本


今月に入ってからは、この連日の寒さもあり・・・特に何をするということもない毎日を送っています#59142;
それでも、本だけは読んでおりました。
今井敏のハードボイルド、岩井志麻子のもの二冊、それに浅田次郎作品です。
今日は、その浅田次郎の「月下の恋人」のお話です。

この小説、初めは長編と思い手にしたものの・・・中に書かれていたのは男女の恋愛を描いたものから、世の中の不条理を扱ったもの、都会的なムードの短編まで、バラエティに富んだ10編ばかりの短編集でした。
描かれていた内容は・・・・読み終わってからも、もう一度読み返してしまうような不思議な物語が多かったように感じました。

タイトルとなる「月下の恋人」は、
私は付き合っていた恋人に別れを切り出そうとして、最後の夜に彼女とドライブをする。そして訪れた海辺の旅館。
ふたりは一時死を覚悟するものの、向かった海の先でもう一組の恋人達を目撃する。
宿の駐車場にあった同じ形の車は?
波間に見えたふたつの頭は、誰のものだったのか?
しかし結局、その後すぐに彼らは別れてしまうのですけれど。。。

「あなたに会いたい」
少年期に故郷を捨てその後成功した男が、あるきっかけで数十年ぶりに故郷を訪れる。
レンタカーのナビに導かれて行った先は、もうすっかり忘れていた思い出の場所であった。
遠い昔の記憶・・・すてるようにして別れた昔の女性、その人との思い出の場所へ気がつくとたどり着いていたお話。

「冬の旅」
川端康成の「雪国」を読んで、学校で習う「コッキョウ」の読み方に疑問を持つ。
そこで小説に書かれた「国境」を、越えてみようと一人旅立つのだ。
夜汽車の中で出会った一組の男女は若き日の両親なのか?どうしても二人の後を追わずにいられない私。

どのお話も、ストーリーとしてはおちがない。そして読後に不思議なものが残るお話ばかり。どの話も、少々幻想的です・・・
ここには真面目に生きるごく普通の人々、しかし不器用な人たちばかりが登場します。
描かれるのは浅田ワールドだから・・・ストーリーが上手すぎる。読んでいると、作者の思う壺にはまっていってしまいそうに・・・これって、素直じゃありませんね。私には最後までよくわからないお話もいくつかありましたし・・・・

友情と、男女の愛情、親と子の愛情という違う形の愛情がある日つながった、義理の父と娘の物語「告白」が一番無理がなく、良かったように思います#59125;