ごはんのことばかり100話とちょっと

  • 作者: よしもと ばなな
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2009/12/04
  • メディア: 単行本


ドライブ日記が続いてしまいましたが・・・今日は、その間に読んだ本の事を書きます。
と言っても、ホントほとんどが短くて、読みやすいものばかりです。
まずは松本清張の短編集。
本に書かれていた内容は、何時も通りのディープな世界。それにしてもこの作者、どうしてこんなにも人の心理に対して優れた洞察力があるのでしょう。
今年のヒーロー・坂本龍馬と同郷の、高知県出身の作家・坂東眞砂子のこちらも短編集でした。
江戸末期から明治の、貧しくも逞しい庶民の暮らし。生と性をがあからさまに明るくあっけらかんと描かれた内容の本でした。

そして今日紹介するのは、よしもとばななのエッセイ。タイトルで解るように・・・食べることのお話ばかり。
近頃の私は気力も気合も不足しているのか、短いもの、軽いものしか手にしなくなっています。
でもこの作者のエッセイは、書かれている内容がきちんとしている。これまで読んだものに限っても私のツボをおさえていると感じるものばかり。
これまでも、彼女の小説には食事をするシーンが多いように思っていました。
また以前読んだエッセイでも、「食」を大切にしていることが伝わってきていました。
本作では思いついたことをサラサラっと書いているだけ、特にこうでなければとか、食事やお料理のあり方について声高に主張をしている訳でもありません。その時に感じたまま、思ったままを書いたとのことです。
そんな中にでも、現代の食生活の流れに逆らうかのような彼女の確かな自己が見受けられたと感じます。

書かれている・・・よしもと家の日々のご飯や、行きつけのお店で出される食事の数々。
これまでも思っていたことだけど、彼女は良いご家庭で(身体の弱かったお母さん、それをフォローするのは高名な作家のお父さん=吉本憶隆明)大切に育てられたお嬢さんなんだなぁという事を痛感させられた内容でした。
色々な場所で、色々な人たちと共に共有したそのひと時が、後になるとかけがえのない思い出となってくるって言うのも解るなぁ。
家族って???と考えさせられてしまうことも、いばしばでした。
食事の時間はご飯を食べるだけじゃない、そこには、それに付随するものも一緒であること・・・
特に人にとって、子供時代の食べると言う行為。たかが子供だし、子供だから何も解らない訳ではないのです。

作者がチビと呼んでいる、お子さんの2歳~6歳までの子育ての間。
食事をすること、食べものを大切に味わうのは・・・人が生きていく上で、そういう記憶って意外と大切なんだと作者が思っているから。

本の帯に「ふつうの家庭料理がやっぱりいちばんおいしい!」となっていますが・・・
私自身、もう30年も専業主婦でありながら、毎日お家のご飯をちゃんと美味しく作るのは実に大変なことだと思います。
滅多にないことだけど・・・初対面の人と食事をする時って緊張をしてしまいます。そこには、その人の生活や性格、考え方までもが現れてしまうことだから。
まして、その食事が自分が作ったものであったなら余計にです。
毎日一緒の家族の場合その緊張感がなくなっているのが、その原因のひとつになってしまっていると思います。

ここに登場するごはんは、国内の東京なみならず、イタリア、ハワイ、ヴェトナム、ネパール、台湾、沖縄、青森などなど・・・そして交流のある人たち、村上龍、田口ランディ、先日紹介した「シネマ食堂の」飯島奈美らとのエピソードも書かれています。
普段のごはんを食べるのと同じ、さっと読めてしまう本です。