告白

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 単行本


昨年映画化をされ、そのテレビ放映も間もなくと言う・・・話題の小説「告白」を読みました。
作者・湊かなえのデビュー作にして、第6回本屋大賞を受賞したベストセラー作品です。
中学校の終業式の日。
一年生の担任教師である森口は、生徒を前に淡々と・・・しかし、衝撃的な告白を始める。
「私の娘・愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」
学校のプールの中、変わり果てた姿で発見されたのは彼女の娘愛美。
当初は事故と思われたこの事件が、実はクラスの生徒による殺人事件だったと森口は語り始めるのだ。
そして彼女が選んだ、犯人達への復讐方法とは・・・・
刑事罰の対象年齢までいっていない犯人達に対して、精神的な暴力で追い詰めていく。
それから始まる、クラスメート達のいじめと嫌がらせ。

教師の森口、犯人として名指しされた生徒二人、クラスメイトである女生徒、犯人の母親・・・
1章ごとに、告白をしていく語り手は変わる。それぞれの視点から、事件の全容が明らかになってくるのです。
女生徒・北原美月、少年Bと、その母親。
それぞれの状況や年代も違っているが、事件に関わった登場人物の独白形式で全編が構成されています。


子供を殺された怒りと悲しみ、痛みとやるせなさ。森口の冷静過ぎるほどの語り口は、感情を抑えてのものであったとしよう。
自己愛の強さばかりが目立って、周囲を全て「馬鹿ばっかり」と見下す少年A。
思慮が足りない幼さの目立つ新任教師。問題をオープンにしない学校の隠蔽体質。
偽善的で我が子の胸のうちに思いをめぐらすことの出来ない親、簡単に子供を捨ててしまう親の姿もここでは描かれている。

ここではひとりとして、感情移入出来る人物はいません。
垣間見えるのは、人間のもつ残酷さ、怒りの感情、愛情への欠乏、蔑み。
常に周りを観察しそれに合わせている中学生達の繊細さは痛々しく、殺伐とした感情は不幸せな社会ゆえに生まれたものなのかと思ってしまう。
子供とは、生きにくい現代の世の大人達の姿を映し出す鏡のような存在なのだろうか。
今の日本社会が抱える複数の問題が、ここでは浮き彫りにされたかのように感じます。
まともとは思えない登場人物達には、思わず・・・「どいつもこいつも・・・」なんて!・・・オホホホ・・・そのような言葉さえ出てきてしまいました。
人の気持ちの中にある不気味さと怖さを、ずっと感じつつ読み終えましたけど、後味も良くない作品でした。
面白かったかと問われたら、それもまた微妙な感じです。正直、期待が大きすぎたのでしょうね。
それでもラストまで一気に2~3日間で読んでしまったのだから、作者が優れたストーリーテラーであることは間違いないものと思います。