ひそやかな花園

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2010/07/24
  • メディア: 単行本


このところスッカリサボってはいたものの・・・一応、本だけは読んでおりました。
今日は、その中の二冊。

「八日目の蝉」に次ぐ、角田光代の新作の「ひそやかな花園」。
毎年、夏休みになると決まってある別荘に集まる七組の親子。そこは一組の家族の持ち物である大きなログハウス。
一定の期間このサマーキャンプを過ごしてきた7人の子ども達。輝くような夏の思い出は、一人一人にとって大切な思い出、記憶だったのだが・・・
きらめく夏の日々、その裏には親達により隠された秘密があった。

以下は、ネタばれになります。
それは・・・同じクリニックで知り合い交流が始まった、夫以外の精子で人工授精をして子供を授かった家族の集まりだったのだ。
成長した子供達が懸命に連絡を取り合い、調べた結果判明した事実であったのだが・・・
期待を持って読み進めていただけに、「なんて!思わせぶりなぁ~!」と拍子抜けをしてしまいました。
しかしその選択に至る夫婦間の葛藤は、想像にあまりある。
適わない場合、どのような手を使ってでも子供は欲しいものなのか!?

子供を生むと言う事、子供側からしたら今目の前にいる親が生物学上の親か、育ての親か・・・が作品のテーマとなっている。
その辺り「八日目の蝉」と似通っていると感じられます。
小説のラスト。
父親がだれであれこれが自分の人生、この先も一生懸命に生きていこうとする・・・それぞれの子供達が前向きな姿勢になり・・・ラストを迎えます。
重いテーマを扱った本作において、救いとなっていると思いました。
子供がいてもいなくても一人でも二人でも、 それぞれの状況で人は幸せを感じることが出来るはずと思う。それは私の勝手な思い込みなのかもしれませんけれど。。。


追悼者

  • 作者: 折原 一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本


下町・浅草の古びたアパートで発見された絞殺死体。被害者は大手旅行代理店のOLだが、夜になると街で男を誘っていたという。
ここまで読んで・・・過去に起きた東電OL殺人事件をモチーフとした小説と思われる方は多いものと思う。
あの事件から、ノンフィクション作家の佐野眞一は「東電OL殺人事件」を書き上げ、桐野夏生は同性の視点から力作「グロテスク」を書いたのでした。
しかし本作は実話ではないミステリーであるから、事件現場も被害者の勤務先も変えています。

事件に興味を抱いたノンフィクション作家が、彼女の生い立ちを取材する。
すると、彼女の周辺では奇妙な事件が相次いで起きていたことがわかってくる。
彼女を殺した犯人は?その動機は?
本書では、ライター笹尾の視点から書かれたものと、関係者の証言が交互に続く。
そこへ誰の視点からなのかわからない独白が挿入されているので…読者は混乱させられるのだ。
殺害されたOL奈美の過去が明らかになるにつれて謎は広がっていき、疑わしく感じる人物も変わっていきます。
私は最後の最後まで犯人がわからなかった、意外でした。
事件をモチーフにはしていますが、これがこの作者の手法なのでしょうか。
相当に想像を膨らませて読み進めていかないと、混乱させられます。ラストはチョッとした衝撃でした。

作者・折原一のものを読むのは、「誘拐者」に次いで二冊目となるのだが・・・面白いとか、好みかと言われたら???
人間のもつ心理状態ほど怖いものはないと思わせる・・・後味は最悪に近い。夏の夜のホラーなみなのであった。
どちらも実家に置いてあったものをもらってきて読んだものです。
自分で選んで読んでおいて…どちらもとんでもなく暗~いなぁ!と感じた作品でした。
同じように暗いなら暗いで、そこに更に毒を盛り込んだ桐野作品の方が爽快だって思ってしまった私です。

グロテスク

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/06/27
  • メディア: 単行本