リスの窒息

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/02/05
  • メディア: 単行本


私自身も初めての作者・著作ながら・・・今日も、少々マイナーな一冊。
ショッキングかつインパクトが感じられるタイトルの本書。この作者のものを手にしたのは初めてのことでした。

都内の私立名門中学に通う野中栞は、成績優秀な少女。
試験の最終日、栞は開放感から友人の小野寺聡子を連れて家に帰る。
ところが自宅二階のベッドルームには栞の両親と、家庭教師の死体が並んでいた・・・そんな惨劇を二人は目撃してしまいます。
栞の家庭教師と不倫をしていた母、気づいた父は母と家庭教師を殺害、自らも死を望んだのであった。
ショッキングすぎるシーンを目撃したに関わらず、それよりも自分の将来に不安を感じた栞。そして彼女は大胆な計画を思いつく。

読者である我々は、最初からこれが狂言であることがわかっている。
友人の聡子に自分を縛らせて、その写真を撮らせて。メールに添付して送る。そのメールにより「新聞社が身代金を払わなければ、この子を殺す」と脅された大手新聞社・秋津新聞。
我が社が、身代金目的の誘拐事件の標的となったのか???
見ず知らずの少女を救うためには、身代金は支払うべきなのだろうか。
前代未聞の要求を前にして、担当者たちと犯人との攻防戦はこうして始まった。

栞からメールを受け取った秋津新聞の投稿課。担当者の枚原馨と細川幸二は、上層部に報告をします。
出張中の社長に代わり、鴨志田編集局長が指揮をとることになるのだが…
栞は秋津新聞宛てにメールすると共に、秋津新聞とは犬猿の仲の週刊道標にも同じメールを送っているのである。
毅然とした態度で警察に連絡すべきか。犯人からの理不尽な圧力に屈して代金を支払うべきか。
しかし選択の場合によって、経緯を見ている週刊道標が何を仕掛けてくるかわからない。

ここで更に、最も面倒で厄介な問題が出てくるのだ。
社内の誰にどのような経路でもって報告をするか・・・と言った社内事情が考慮され、優先されるのだから。
人命より最優先される事、それは何をするにも社内事情について考慮し、社としての行動や保身がまず第一とされていくのである。
身代金要求という事態のもとではあるのだが、やっていることはある一定規模以上の会社でよく見られる社内事情を考慮して調整すると言った事に他ならない。

これは途中から・・・正に密室劇。人の思い込みを利用するほど容易いものはないと思わせてくれたり・・・
異常な状況下で中学生にいい年をした大人達が容易に翻弄されてしまう、プレッシャーから怪我人まで出る始末。
社内で最も尊敬をされていた社主の息子であり、若くして渡米した先の名門大学でMBAを取得した秀才・鴨志田編集局長が最も面倒かつ厄介な人物であった事など・・・
そんな中、常に冷静な判断と行動をしていく元社会部記者の細川はカッコイイ。

それは今回の大震災においても…始動の早さは政府の対応よりも、民間のほうがいち早いものであった事が思い出されてならない。
福島原発の事故に際しての無策や、対応の不味さ遅さもまた然り。

大人達は常に心理と行動を先読みされ、先手をうたれ、中学生達に翻弄されていく。
身代金の受け渡し方法も、栞本人が出向いてくると言った型破りなものであったのだから。
結末、そしてタイトルの意味が知りたいあなた。夏休み中に、これいかがでしょう。

今日のおやつは、白たい焼き。
皮にはタピオカが入っているためか、かなりもちもちしています。
本を読みながら・・・熱い日本茶に、小豆餡のたい焼き。
             
もう一冊あるんだ。明日も、本ネタですよ~~