阪急電車

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 単行本


鉄ヲタつながりで・・・・ププッ! 今日は、有川浩作品「阪急電車」の紹介をします。
しかしこのタイトル、阪急電車に乗り合わせた乗客たちのドラマが描かれている本ですので、誤解のありませんように。

兵庫県宝塚市の宝塚駅から西宮市の今津駅までを結ぶ、今津線を舞台にしたオムニバス形式の小説。各駅ごとの章となっており、そのそれぞれで主人公が変わる。
主人公は変わっていく中、それぞれがどこかでつながって構成されるストーリー、そこが本作の一番の魅力であると思う。

主人公たちは・・・
美人OLの翔子。彼女は入社以来調子よく取り入り続けてきた後輩に、彼を寝取られます。
犬を飼い始めようかと思い悩む老婦人と、その孫娘。
暴力を振るう男と付き合う気弱な女子大生。しかし彼女も心の中ではそんな彼から逃げたいと思っていたのだった。
図書館で知り合い何時の日か互いを意識しあうのは、地方から上京してきたどこにでもいそうな男女。
しっかりものの女子高生と社会人の彼のカップル、等・・・
関西の電車ならではの?セレブを気取ったハデハデなオバチャン軍団も登場をしてきます。

中でも主役と思われるのがアラサーOLの翔子。彼女は5年間付き合った彼との結婚寸前に、調子のよい後輩に取られてしまうのだ。
それに対する腹いせから結婚式に純白のドレス姿で乗り込み、花嫁よりも美しく目立つことで溜飲を下げたはずが・・・後に残ったのは空しさだけ。
帰りの車内で出会ったおばあさんの言葉から、見知らぬ駅に降り立つことになるのです。
適切なアドバイスを受けた事で、翔子はむきになっていた自分を省み自信と希望を取り戻していくのだ。それは読者である我々も同感するばかり。

ここでは特別な事件が起こるわけではなく、登場人物たちは誰もが持つであろう問題やささやかな幸せを抱えて生きている。
しかしそれぞれが絶妙なタイミングで交錯をし、影響しあう。
その様子から、読んでいると自分も今津線に乗っているような気がしてくるのだった。
ごく普通に暮らす人々の日常から切り取られた題材。
それぞれの結末は・・・「まだ日本人も捨てたものではない」とする安心、ほのぼのとした読書感が残るのです。

各駅ごとの乗車時間は短いものと思われる。
それは小説の方も同じ。私は一日で読み終えてしまいました。
作者の名前、浩は「ひろ」と読む、作者は女性だそうです。私は男性作家だとばかり思っていましたけれど。。。

本作は、先頃映画化もされました。
まだ未見ながら・・・コマーシャル等で見る、翔子役=中谷美紀のウェディングドレスを思わせる純白のドレス姿。その凛とした佇まいはとても美しいです。
老婦人=宮本信子、孫娘=芦田愛菜ちゃん。それぞれが文句のつけようのない適役に思えます。