天網恢々 お噺奉行清談控

  • 作者: 林望
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/08/17
  • メディア: 単行本


本書は「お噺奉行清談控」のサブタイトル通り・・・
駿河台富士見坂の屋敷を訪問してくる人々を歓待し、それぞれがもつ困り事や悩みを聞き出すのを得意とする通称・九郎左衛門=江戸南町奉行の重職にあった老人、根岸肥前守鎮衛。
その彼が中心となり、人相見の栗原幸十郎や薬売りの銀次、スリ名人・河童の平六たちが町で聞き込んだ悪事や奇妙な出来事が、鎮衛に吟味され事件は解決されていく。
豪放磊落な人柄の根岸鎮衛が、天網恢恢と悪事を裁き庶民を助けてゆく。人情味溢れる短篇が5編収められているものです。

公務における裁きではないから、それは人情味を感じるやり口で、明るく豪快そのもの。5件の事件は束の間に上手く収まるのであった。。。
タイトルの「天網恢恢疎にして漏らさずとは」…天罰を逃れることは決してできないということのたとえ。 天道は厳正であり、悪いことをすれば必ず報いがあるとするもの。


イギリスはおいしい

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1991/03
  • メディア: ハードカバー


作者・林望で真っ先に思うのは、自らの体験から生まれたイギリスの食文化&食生活に関して記した「イギリスはおいしい」でしょう。
私が最初にスコーンを焼いたのも、この著作の影響を受けて。そしてそれは初めてに関わらず、本場仕込みのスコーンと同じように焼けたのでした。

「食」に関した視点からしたら、イギリスというところはグルメとは全く無縁に思える国です。
しかし本書を読むと…イギリスのもつ不思議さや面白さ。かの国においても独自の食文化に特徴があるという事も理解出来きました。
従来はあまり知られていなかった国の文化を取り上げ、興味深い内容となっているのです。
とは言っても、贅沢なブレックファースト、フィッシュ&チップスをのぞいたイギリスの食べ物はやはり美味しくはなかった。それは私個人のたった10日間のツーリストを経験して出た結論ながら・・・

愛情たっぷりに書かれた同シリーズは、他に「イギリスは愉快だ」「ホルムヘッドの謎」。「リンボウ先生シリーズ」等、一時はまって読み続けてしまいました。
でも本作は、随分と久しぶりに手にとったもの。
それも「江戸もの」です。しかしそれも作者の専攻が元々、日本書誌学・近世国文学である事を思えば当然とも思えるものでした。