鉄の骨

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/10/08
  • メディア: 単行本


「鉄の骨」は、作者池井戸潤の二度目の直木賞候補作品。
受賞作品である「下町ロケット」とは、読む順番が逆になってしまいました。でも負けず劣らず面白かったです。

中堅ゼネコンの「一松組」に勤務する富島平太は入社3年目。突然の辞令により本社・業務課への異動、建設現場から土木部営業一課勤務を命じらます。
しかしそこでの主な仕事と言えば、大手ゼネコンの代表者が集まり公共事業の割り振りを調整する「談合」であった。
談合と言う不条理な日本的システムのあり方を問う、530ページを超す長編大作です。
本作は自分が普段読むものとは全く違う分野のお話。
ゼネコンとか、談合とか、経済小説って大体が専門的な用語も多く難しくて関心がわきません。
それを一気に読ませてしまう作者の筆力、ストーリー展開の面白さは、下町ロケットと通じるものを感じました。

不況の波にのまれ資金難にあえぐ状況下、会社倒産の危機を前にして、業務課では二つの大きな仕事が待ち構えていました。
現状としては手に入れたい、地元自治体が発注する30億円規模の比較的小さな工事。
そしてその後に狙うのは、国も絡む2000億近い巨大地下鉄工事。

入札にあたっての、工事費のコストダウンへの努力等、強引なまでの必死さを見せる課長の兼松、先輩の西田。
トップに立つ出来る男は、常務である尾形。
大物政治家・城山の義弟にあたるフィクサー三橋との出会いが、平太を仕事にのめり込ませて行く・・・。
地下鉄工事を得意とする一松組だけに、地下鉄工事だけはどうしても欲しい仕事だった。

主人公である平太は正義感の強さゆえ違法行為に加担する事に抵抗を感じるが、一松組はどのような立場をとるのか。
入札前の息づまるような、スリリングな緊迫感。
談合は悪いこととわかってはいるものの・・・生き残る上での必要悪なのではないかとも受け取れてしまう個所もあったりして・・・
社運を賭けた一大プロジェクトに対するゼネコン各社のやり取り、建設業界のリアルさ、凄まじい競争。
メインテーマである、談合の実態。マネーロンダリング=銀行を通しての複雑なお金の流れ・・・

ここに描かれるのは、自らの仕事に対する男たちの自負と情熱、誇りに執念。
東京地検の捜査が絡んで、腹黒い政治家の存在もあり・・・と、これはまさにエンターテインメント。
私にとって遠くて難しい世界が、一人の若い社員の目線となる事で身近なものとなり、主人公の気持ちに感情移入出来たのは良かった。
描かれた骨太な内容は、正に「鉄の骨」。タイトル&装丁がピタリと合っているものに思えました。

下町ロケット

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/11/24
  • メディア: ハードカバー